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ペットは復興のパートナー!災害時にペットといることが復興を早める科学的根拠

熊本地震柴犬とおばあちゃん

はじめに:ペットとの「同行避難」は、未来への希望をつなぐ復興戦略

災害は、私たちの日常、家、そして時には心の平穏までも突然奪い去ります。そんな想像を絶する困難な状況で、もし愛するペットがそばにいてくれたら…?

実は、災害時にペットと一緒にいることは、単なる心の癒やしに留まりません。飼い主自身の精神的な健康を支え、生活再建への意欲を引き出し、ひいては地域社会全体の「復興を加速させる力」になることが、様々な調査や過去の災害事例から明らかになってきました。

今回は、なぜペットとの同行がそれほどまでに重要なのか、その科学的な根拠や被災地での実例を交えながら分かりやすく解説し、私たちが平時から備えるべき「ペット防災」の本当の意味について考えていきます。

科学が証明する「癒やし」の力:ペットがもたらす絶大なストレス軽減効果

災害時の極度のストレスは、心身に大きな負担をかけ、冷静な判断力を奪い、不眠や体調不良を引き起こします。そんな時、言葉を話さないペットの存在は、計り知れないほどの心理的な支えとなります。

いつでもそばにある「アニマルセラピー」 犬や猫を優しく撫でたり、ただ寄り添って体温を感じたりするだけで、人の体内では「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンが分泌され、逆にストレスホルモンであるコルチゾールが減少することが科学的に証明されています。これは、被災者がいつでも、どこでも受けられる「アニマルセラピー」に他なりません。先の見えない不安の中で、愛犬の穏やかな寝息を聞いたり、愛猫がゴロゴロと喉を鳴らす音に触れたりすることは、何物にも代えがたい心の安定剤となるのです。

トラウマからの回復を助ける存在 「自分はこの子に必要とされている」「この子の命は自分が守らなければ」という感覚は、家や地域とのつながりを失った喪失感の中で、被災者が生きる目的と自己肯定感を保つための大きな支えとなります。

逆に、災害によってペットと離れ離れになってしまうことは、飼い主にとって家を失うのと同じくらい、あるいはそれ以上に深刻な精神的ダメージ(PTSDやうつ病)につながるという報告も少なくありません。「あの時、もっと強く抱きしめていれば…」という後悔は、深い心の傷として長く残り、復興への歩みを妨げる要因にさえなり得ます。

ペットと一緒にいることは、こうした深刻なトラウマを未然に防ぎ、回復への道のりを短縮するための、積極的な心のケアなのです。

「この子のために」が生きる力に:日常を取り戻すための小さな一歩

災害後の混乱した生活の中で、「生きる力」や「日常」を取り戻すことは、復興への極めて重要な第一歩です。ペットへの責任感と愛情は、そのための最も強力な原動力となります。

再建への強いモチベーション 多くの飼い主にとって、ペットはかけがえのない「家族」です。「この子を守らなければ」「この子のためにもう一度、安心して暮らせる家を再建しよう」という強い思いは、煩雑な行政手続きや先の見えない再建作業に立ち向かうための、何よりも強いモチベーションになります。自分のためだけではくじけてしまいそうな時も、足元で信頼の眼差しを向けるペットの存在が、「もう一度立ち上がろう」という勇気を与えてくれるのです。

生活リズムを取り戻すペースメーカー 食事の準備、散歩、トイレの世話。ペットのお世話は、たとえ災害時であっても待ってくれません。この「当たり前の日課」をこなすことが、災害によって完全に失われてしまった生活のリズムを取り戻す、重要なきっかけを与えてくれます。朝起きて散歩に行く、決まった時間にご飯をあげる、といった規則正しい生活は、心の安定に不可欠であり、未来へ向けて一歩ずつ行動していくためのエネルギーを生み出すのです。

ペットが繋ぐ地域の絆:孤立を防ぎ、コミュニティを再生する

避難所や仮設住宅での生活では、プライバシーの欠如や慣れない環境から、人々は精神的に孤立しがちです。しかし、ペットは人と人とを繋ぐ「社会的な潤滑油」としての素晴らしい役割も果たしてくれます。

会話を生み出すきっかけ 「かわいいワンちゃんですね」「猫ちゃん、おとなしいですね」――。ペットがいるだけで、そこには自然な会話が生まれます。動物という共通の関心事が、それまで話したこともなかった被災者同士の心を繋ぎ、情報交換や助け合いといった非公式な支援ネットワークが生まれるきっかけになるのです。

コミュニティ形成の核として 実際に熊本地震の避難所では、飼い主たちが自主的に集まり、ペットの世話に関するルール作りや、散歩当番、清掃活動などを協力して行う「飼い主の会」が自然発生的に生まれ、コミュニティ形成の核となった事例が数多く報告されています。こうした活動は、共同責任や助け合いの輪を育むだけでなく、ペットを飼っていない避難者への配慮にも繋がり、避難所全体の連帯感を高め、復興への大きな力となりました。

だからこそ「同行避難」が重要!今すぐできるペット防災

これまで見てきたように、ペットと一緒にいることは、飼い主個人の心身の健康だけでなく、地域社会全体の回復力を高め、復興を早めるための重要な鍵となります。それも、国が災害時にペットとの「同行避難」を原則としている大きな理由の一つです。

まとめ:「同行避難」は、社会全体の復興力を高める

災害時におけるペットとの「同行避難」は、単なる動物愛護の問題ではありません。それは、飼い主自身の心と命を守り、被災した地域社会の回復力を高めるための、極めて合理的で効果的な「復興戦略」なのです。

私たち一人ひとりがペット防災への意識を高め、平時から具体的な備えを実践すること。それこそが、いざという時にあなたと、あなたの大切な家族であるペット、そして地域社会全体を守ることに繋がります。

「ペット防災の基本を学ぶペット防災ガイド」https://petbousai.jp/guide

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