ペット防災は日常から 災害時に愛犬を守る「適正飼育」

その「なんとかなる」が愛犬の命を危険に晒すかも
「ペット防災」という言葉を耳にする機会は増えましたが、実際に「具体的な準備」までできている方は、まだ少ないのが現状です。
「避難所がペットNGだったらどうしよう…」
「うちの子はよく吠えるから、周りに迷惑をかけてしまうかも…」
「何とかなると思っているけど、実際のところは…」
災害は突然やってきます。その「なんとかなる」という気持ちが、愛犬にとっては命にかかわる事態を招きかねません。 だからこそ、私たち飼い主が「今」できることから始めてみませんか。
ペット防災の基本は「適正飼育」にあり
皆さんは「適正飼育」という考え方をご存知でしょうか。これは、愛犬が健康で安全、そして快適に暮らせるように、飼い主が責任を持って育てることを指します。 実は、この日常生活における「適正飼育」こそが、災害という非日常を生き抜く力に直結するのです。
毎日の散歩が災害時の「命綱」になる理由
毎日の散歩は、愛犬との絆を深める大切な時間です。しかし、こんな光景に見覚えはありませんか?
リードをぐいぐい引っ張って、行きたい方向へ突き進む
他の犬や人に興奮して、言うことを聞かなくなる
名前を呼んでも、こちらを全く見てくれない
普段は「元気な証拠」と見過ごせる行動も、災害時では状況が一変します。突然の大きな音や揺れ、大勢の人が行き交う慣れない環境。そんな極限状態の中で、飼い主のそばに落ち着いていられるかどうかは、まさに生死を分ける問題です。
日々の散歩を通して、「リードが緩んでいても、飼い主の存在を意識してくれる」「アイコンタクトを取りながら歩ける」「『待て』の指示がきちんと伝わる」
といった関係性を築くことが、何よりの防災対策になります。こうした信頼関係は、日々の暮らしの中でしか育むことはできません。
トイレのしつけも立派な「防災準備」
散歩中の排泄物、きちんと処理していますか?放置された糞便は、地域の環境を損なうだけでなく、愛犬の健康状態を知る貴重な機会を失っていることにもなります。 糞便は、最も簡単で分かりやすい健康のバロメーターです。毎日チェックする習慣があれば、災害時のストレスによる体調の異変にもいち早く気づくことができます。
また、「犬はどこでもおしっこをするもの」と思っていませんか?実は、トイレもトレーニングが可能です。
「ワンツー・ワンツー」などのコマンド(合図)を使い、「ここでして欲しい」という場所で排泄するよう根気強く教えます。 飼い主が望む場所で排泄ができるように普段から練習しておくことは、避難所での共同生活や車中泊など、環境が制限される状況で非常に役立ちます。これも立派な「防災準備」なのです。
日々の積み重ねを、もしもの時の安心へ
今回ご紹介したことは、どれも特別なことではありません。 しかし、日々の生活における少しの意識と行動が、もしもの時にあなたと愛犬を守る大きな安心感に繋がります。 いざという時に「普段からやっておいて本当によかった」と心から思えるように、今日から実践してみましょう。
ドッグライフカウンセラー 浅沼 瑠実