「ペット防災に取り組むきっかけ・日ごろ感じていること」

はじめに:ペット防災に取り組むきっかけ
ペット防災の勉強を始めたきっかけと、ペット防災を拡めるための活動を始めたきっかけがあります。私がペット防災の勉強を始めたきっかけは、2019 年の台風 19 号です。近所の川があわや決壊寸前に迫り、決壊すれば 3~5mの浸水地域に住んでいた私は愛猫をどうしたら守れるかわからず、一晩中とにかく不安で怖かった。それからペット防災の勉強が始まりました。
市内の避難所は、ペットを連れて避難できたところもありましたが、大雨の中マニュアル通りにペットは外に係留するよう指示され避難所に行くのを諦めた人もいました。市内でペット同行避難の方針が今よりも随分あいまいだったように感じた記憶があります。
「ペットは家族です」の一言
ペット防災を拡めるための活動を始めたきっかけは、後日近所の町会でこの時の地域の避難状況の報告会をしていた方との出会いです。また災害が起きた時に、自分が入れなくてもペットだけでも何とかして避難所に入れてもらえないか交渉するためにこの報告会に参加しました。
望む回答が得られなかった時には、相手を脅したり、刺し違えても構わないと思っていたくらい心に余裕がありませんでした。そんな私とは対照的に、会の主催者は当然のように躊躇なくこう答えました。
「ペットは家族ですから。どうぞ連れて避難して来てください。」
この時に感じた安堵の感覚を私は忘れることができません。今思えば恥ずかしいくらいの無知からの不安でしたが、人は不安に駆られると心に余裕がなくなること、暴力的な発想を抱くことを経験しました。
災害時にペットを連れて避難に困り、私のように不安になる人を無くしたいと思い、ペット防災を学びながら拡める活動を始めました。
ペット防災で大切な事とは?日々の活動で感じる事
ペットを守りたいならまず自分が生き残らなければならない。
災害はいつ起きるかわからないし、いつペットと離れ離れになるかわからない。だから、毎日が記念日。毎日が大切な時間。
避難は避難所に行くことだけでなく、安全な場所に身を寄せること。安全に過ごせる場所の選択肢はたくさん持っていたほうがいい。
発災時に全ての避難所が開設されるとは限らないため、どの避難所でもペット同行避難者を受け入れられる体制づくりが必要。
しかし、避難所によって空きスペースや利用者数に違いがあるため、ペット飼育スペースを一律に決めることはできない。
各避難所でのベストを探り、ペットとの居場所を確保する飼い主力をつけていきたい。
ペットを飼っている人は家族構成・生活環境・年齢・健康状態などさまざまで、人が安全に避難できなければペットは避難できない。
ペットとの避難には、人が安全に避難できるための日ごろからの地域のつながりや町づくりが大切。
飼い主が避難を諦めたらペットは避難できない。
災害時に守りたいものは人それぞれ。私にとっての「猫」は、誰かにとっての「何か」。お互いの大切なものを尊重しあうことが、災害時のトラブルを減らし、一つでも多くの命を守り、地域の安心と安全を少しでも早く取り戻すことにつながっていくと想像している。
逆に、ペット飼育者が周囲の状況を考えず勝手な振る舞いをすれば、飼育者だけでなく大切なペットも社会から排除されるだろうと予想する。
「自分だけ特別」は絶対にない。
まとめ 過去から学び、未来へ備える
私は市から委嘱を受けた動物愛護推進員でもあります。ふだんは動物愛護・適正飼養に関する啓発、市の動物愛護事業へのご協力などをしていますが、災害時には市の災害対応へのご協力・ご支援も役目の一つです。
発災時には、まずは自分とペットを含む家族の安全を確保したのち、速やかに地域を安心安全に導くハブの一人になれるよう、これからも防災のこと、地域のこと、自分のペットのことを勉強していきたいと思います。
被災経験がない私にとってできることは、過去から学び・備えることです。過去の辛い経験が繰り返されないようにと、奮起してご経験を伝え、残してくださる方々の存在と、あらゆる啓発物に背筋の伸びる思いです。
ペット防災ネットワークの勉強会では、これまで学んできたことをより深く理解したり、新たな気づきと視点を与えていただいています。
人とペットの防災クラブ/川口市動物愛護推進員 近江和子
ペット防災ネットワークは地域でのペット防災活動を行うみなさんを支援します
災害時のペット支援は、その地域に暮らす方々が主体となって取り組むことが原則です。なぜなら、飼育されているペットの種類や数、高齢者の割合、利用できる施設といった地域ごとの特性を最も深く理解しているのは、そこに暮らす皆様自身だからです。地域の皆様が中心となる活動こそが、外部からの支援だけに頼らない自立した防災力を育み、ペットとその家族、そして地域全体のより早い復興を可能にします。
私たちは、地域主体のペット防災の取り組みが円滑に進むよう、現場経験と全国ネットワークを活かし、各地で活動される皆様を災害時・平時を問わずサポートします。
正しいペット防災の知識を得るセミナーはこちら https://petbousai.jp/seminar