ペットとあなたの命を守る避難の鉄則|災害時の「まだ大丈夫」が危ない理由

近年の日本は、予測できない豪雨、勢力を増す台風、そして広範囲に及ぶ山火事など、常に多様な自然災害の脅威に晒されています。
平穏な日常が一瞬で奪われる可能性がある中で、私たちの命を守る最も重要な行動は何か。 それは「正確な情報に基づき、ためらわずに早期避難する」ことです。
しかし、現実はこの理想とはかけ離れています。 ある政令指定都市の実際の避難状況を見てみましょう。
事例1(豪雨災害): 避難対象者111,838人に対し、実際の避難者はわずか67人(約0.06%)
事例2(台風接近時): 避難対象者105,310人に対し、実際の避難者は12人(約0.01%)
事例3(別の豪雨災害): 避難対象者105,316人に対し、実際の避難者は195人(約0.19%)
これらの数字が示すのは、「高齢者等避難」といった切迫した情報が発令されても、ほとんどの人が避難していないという深刻な現実です。
これは、ペットとの同行避難の是非を議論する以前の、根源的な課題と言えるでしょう。 その原因は、私たちの心の中に潜む「正常化バイアス」にあります。
あなたの判断を鈍らせる「正常化バイアス」とは?
「前の大雨でも大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」 「周りも避難してないし、自分だけ慌てることもない」
災害が迫る中で、頭をよぎるこれらの思い込みこそが「正常化バイアス」です。 これは、自分に都合の悪い情報を無視したり、危険を過小評価したりする人間の心理的な特性です。心の平静を保とうとする自己防衛本能ですが、こと災害対応においては、このバイアスが命取りになりかねません。
過去の経験が、未来の安全を保証することはありません。 「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信が、避難という最も重要な行動を遅らせてしまうのです。
ペットがいるからこそ、誰よりも早く動く
ペットとの避難は、決して簡単ではありません。 キャリーケースの準備、数日分のフードや水、薬、トイレ用品の運搬。慣れない環境に敏感なペットを落ち着かせながらの移動は、心身ともに大きな負担がかかります。
この大変さが「まだ大丈夫」という正常化バイアスと結びつき、避難をためらう大きな要因になり得ます。
しかし、忘れないでください。 困難さを理由に避難を諦めてはいけません。むしろ、愛するペットがいるからこそ、通常よりもさらに早い段階での避難準備と行動開始が絶対に必要なのです。
「空振り避難」は、最高の防災訓練
「避難したけど、何も起こらなかった。無駄足だったかな?」
そう感じることがあるかもしれません。 しかし、それは無駄足などではなく、「何もなくて本当に良かった」という最良の結果です。
空振りを恐れて避難をためらい、万が一の事態に巻き込まれることこそ、最も避けなければなりません。 実際に避難することは、いざという時のための極めて実践的な訓練になります。
避難経路は安全か?
持ち出すものは足りているか?
ペットと一緒にスムーズに移動できるか?
この経験そのものが、あなたの防災意識を飛躍的に高め、次の災害への備えをより確実なものにしてくれるのです。
防災意識を高めるためのペット防災セミナーも定期的に開催しています。https://petbousai.jp/seminar/
ためらわず、早く、逃げて。
台風や豪雨は、ある程度予測が可能な災害です。 日頃から防災意識を持ち、「正常化バイアス」に打ち勝って、とにかく早く逃げてください。予測できる災害で失われる命は、早期避難で限りなくゼロに近づけられるはずです。
あなた自身の命を、そして愛するペットの命を守るために。 ためらわず、早く、逃げてください。