
【活動報告】なぜ災害時に同行避難が必要なのか|山形県「人とペットの災害対策セミナー」講演
2023年(令和5年)2月7日、山形県(防災くらし安心部 食品安全衛生課様)が主催する「人とペットの災害対策セミナー」にて、講師を務めさせていただきました。
当日は、拠点を置く熊本県からZOOMを活用してオンラインで登壇し、『災害時のペット支援 〜過去の被災地の現実から』という演題で約2時間お話しさせていただきました。今回はその活動報告をお届けします。
地域防災を担う多様な参加者の皆様
本セミナーはオンライン配信に加え、山形県庁の講堂でもパブリックビューイング形式で視聴いただけるハイブリッド形式で開催されました。
ご参加いただいたのは、山形県内各市町村の防災担当・動物愛護担当の行政職員の皆様をはじめ、獣医師会、動物愛護推進員、地域のボランティア団体の方々など、地域防災の最前線を担う多岐にわたる皆様です。
行政と民間がそれぞれの垣根を越え、同じ危機感を持って災害時のペット対策について学ぶ、非常に熱量の高い場となりました。

※当時のチラシには「一般社団法人HUG 代表理事 冨士岡」として記載されておりますが、現在は「NPO法人ペット防災ネットワーク 理事長」として活動を継続しております。
【講演内容】なぜ災害時に「ペット同行避難」が求められるのか?
講演では、私が熊本地震をはじめとする数々の被災地支援で直面した事実をベースに、ペット同行避難の必要性や課題についてお話ししました。
同行避難は「人の命を守るため」の基本原則
最も重要な前提として、「なぜ災害時にペット同行避難が強く求められるのか」について解説しました。
それは単に動物を可愛がるからではなく、「飼い主の命と安全を守るため」に他なりません。
過去の事例でも、同行避難の受け入れ体制が整っていなかったために、飼い主が危険な自宅に留まったり、過酷な車中泊を続けたりして、健康被害(エコノミークラス症候群など)や最悪の事態を招くケースが報告されています。
ペットを守る仕組みは、被災者支援の根幹に関わる問題なのです。
過去の事例から見る「現状の課題」と「解決策」
避難所という非日常の空間では、動物が苦手な方やアレルギーを持つ方への配慮も不可欠です。
過去の災害現場で実際に起こったトラブル事例を共有し、それらを未然に防ぐための「動線の分離」や「飼い主同士のルール作り(コミュニティ形成)」といった具体的な解決策を提示しました。
平時の体制構築が、行政の「業務負担軽減」に直結する
今回のセミナーにおいて、自治体担当者の皆様に強くお伝えしたのが、「平時に災害時のペット支援体制を構築することは、結果として災害時の行政の業務負担の大幅な軽減に繋がる」という点です。
災害発生後、ペットへの対応ルールが決まっていないと現場は混乱を極め、本来集中すべき人命救助や避難所運営の大きな妨げとなります。
日頃から民間の支援団体や獣医師会と「顔が見える関係」を築き、役割分担を取り決めておくことこそが、最大の危機管理となります。
環境省ガイドラインの「真の意味」を現場に落とし込む
最後に、環境省が定めている「人とペットの災害対策ガイドライン」の意図について触れました。
ガイドラインは実務マニュアルではありますが、そのままでは現場で機能しません。
それぞれの地域の実情(地形、人口、気候など)に合わせて、ガイドラインをどのように「独自の避難所運営マニュアル」へと落とし込んでいくか、その具体的な考え方をお伝えしました。
【質疑応答ハイライト】「法律ではないから」という認識が招く行政の機能不全
質疑応答の時間では、一部の担当者の方から「環境省が定めているとはいえ、法律ではなく単なるガイドラインであるため、どこまで対応する必要があるのか」といった趣旨の質問がありました。
これは現場の実務を預かる行政担当者として、いささか認識が不足していると言わざるを得ません。
そのため、私は客観的な事実に基づき、以下のように解説いたしました。
確かにガイドライン自体は法律ではありません。
しかし、日本のペットの災害対策は「災害対策基本法(根拠・Why)」、「防災基本計画(政策・What)」、そして「ガイドライン(実務・How)」の三層構造で成り立っています。
災害対策基本法では「人命の保護」や避難所の「良好な生活環境の確保」が行政の義務とされており、防災基本計画でも被災者支援の観点からペットの避難スペース確保等が市町村の役割として明記されています。
環境省のガイドラインは、これら法律や計画で定められた行政の目標を、限られた人員で現場において確実に実行するための「具体的な実践手順(運用マニュアル)」なのです。
したがって、「法律ではないから」とガイドラインを軽視することは、行政に課せられた人命保護や被災者支援という法的な義務を実行するための手順を放棄することと同義です。
また、このガイドラインは決して会議室で作られた机上の空論ではありません。
東日本大震災での公衆衛生上の課題を端緒とし、熊本地震においては環境省の職員が発災直後から現地に長期間常駐して実地検証を行いました。
自治体職員、避難所運営者、飼い主、支援ボランティアに対して徹底的な対面での聞き取り調査を実施し、実際の被災現場で生じた数々の失敗や混乱を検証した実証データの集大成なのです。
同行避難の受け入れ体制を整備しないことは、飼い主の逃げ遅れや危険な自宅への引き返しによる二次災害、車中泊の長期化による健康被害、放浪動物による公衆衛生の悪化といった実務的な問題を必ず発生させます。
ガイドラインを参考に体制を構築しないことは、結果的に行政本来の被災地対応を滞らせ、現場の業務負担を増加させる原因となります。
こうした防災体系の全体像とガイドラインの成り立ちを正しく理解し、地域の実働マニュアルとして落とし込むことこそが行政の真の役割であると、論理的かつ実務的な観点から改めてご説明した質疑応答となりました。
まとめ
山形県の行政および関係団体の皆様の防災に対する意識の高さに、私自身も大変刺激を受けたオンライン講演となりました。
当法人では、今後もオンライン・オフラインを問わず全国の自治体様と連携し、「平時の備えが被災者を救う」という信念のもと、実効性のあるペット防災体制の構築をサポートしてまいります。
【実践的な知見に基づくセミナーのご案内】
NPO法人ペット防災ネットワークでは、実際の被災地支援で得た経験とその後の検証に基づき、現場で真に役立つ「実践的なセミナー」を提供しています。
自治体、飼い主、ボランティア、そして事業者の皆様、それぞれの立場に最適化したプログラムの詳細は、以下の案内ページよりご確認いただけます。
[自治体・飼い主・ボランティア・事業者向けセミナーの概要説明]
私たちの知見を、皆様の地域や組織における確実な備えにお役立てください。









