安全な移動のためのグッズ

リードは命綱
大規模な地震や風水害など、いつどこで起こるかわからない災害。私たち人間だけでなく、共に暮らす大切なペットの命を守るためには、日頃からの備えが何よりも重要です。特に災害発生から避難所にたどり着くまでの「安全な移動」、そして「避難生活」において、ペットの命を繋ぐ文字通りの”命綱”となるのが「リード」と「首輪」です。
災害時の混乱した状況下では、大きな音や地面の揺れ、周囲の人の気配にペットはパニックに陥りやすくなります。その結果、家から逃げ出してしまったり(逸走)、飼い主の手を振り払って走り出し、交通事故や落下物による怪我に遭ったりする危険性が非常に高まります。
実際に、過去の災害では多くのペットが飼い主とはぐれてしまいました。このような悲劇を防ぎ、ペット自身の安全と、周囲の人々への安全を確保するために、リードと首輪の正しい準備は防災対策の基本中の基本と言えるのです。
【特に注意】フレキシブルリード(伸縮リード)の危険性
普段のお散歩で、愛犬に自由な動きをさせてあげられるフレキシブルリード(伸縮リード)を愛用している方も多いかもしれません。しかし、災害時において、このフレキシブルリードの使用は絶対に避けてください。その理由は、多くの危険が潜んでいるからです。
コントロールが極めて困難 災害現場は、割れたガラスや瓦礫が散乱し、足元が非常に不安定です。そのような状況でリードが長く伸びてしまうと、咄嗟に犬を制御することができません。パニックになった犬が急に走り出した場合、危険な場所に飛び出すのを防げず、命に関わる事故に直結します。
ロック機能の故障リスク 瓦礫の粉塵や泥、雨水などがリードの伸縮部分やロックボタンに入り込み、いざという時にロックが効かなくなる可能性があります。「短く固定したくてもできない」という事態は致命的です。
細い紐による重大事故 フレキシブルリードの細い紐は、人混みの中では非常に見えづらく、他の避難者の足や自転車、バイクなどに絡まる危険性があります。相手を転倒させて大怪我をさせてしまったり、犬自身がパニックになって紐が首に絡まったりする重大事故にも繋がりかねません。
環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」でも、避難時に使用するリードは「伸びないもの」と明記されています。普段は便利な道具も、緊急時には凶器になり得ることを強く認識してください。災害時に持ち出すリードは、丈夫なナイロンや革製で、飼い主が確実にコントロールできる長さ(1.2m程度)のものを選びましょう。
予備のリードと首輪が命を救う
避難時に使っているリードや首輪が、何かの拍子に切れたり、壊れたり、紛失してしまったらどうしますか?予備がなければ、その場でペットを繋ぎとめる手段を失ってしまいます。
破損・紛失:瓦礫に引っかかって切れたり、避難の混乱の中で落としてしまったりする可能性があります。
汚損:泥や汚物で汚れ、衛生的に使えなくなることも想定されます。
精神的要因:慣れない避難生活のストレスから、犬がリードや首輪を噛みちぎってしまうケースも報告されています。
このような「もしも」の事態に備え、必ず予備のリードと首輪を1セット、防災持ち出し袋に入れておきましょう。
予備の首輪にも、普段使っているものと同様に、①飼い主の連絡先を明記した迷子札、②鑑札、③狂犬病予防注射済票を必ず装着しておいてください。首輪が外れてしまった場合に備え、マイクロチップを装着しておくことで、さらに保護される確率が高まります。
より安全性を高めるためには、首輪とハーネス(胴輪)を両方装着し、それぞれにリードをつなぐ「ダブルリード」も非常に有効な方法です。万が一、片方のリードが外れたり、首輪が抜けたりしても、もう片方でペットを確保できます。
たかがリード一本、首輪一つと侮ってはいけません。その一本が、あなたの大切な家族であるペットの命を左右します。どうかこの機会に、防災リュックの中身を再確認し、愛するペットのための”命綱”の準備を見直してください。