
【活動報告】福岡市舞鶴公園「ワンヘルスパーク」にてペット防災セミナーの講師を務めました
2023年(令和5年)7月、福岡市舞鶴公園内に位置する「ワンヘルスパーク」において、多様なステークホルダーが参加するペット防災セミナーの講師を務めました。
会場には一般の飼い主様をはじめ、福岡県議会議員、ボランティア団体、獣医師会の先生、さらにFukuoka SmartCity Communityに参画する民間企業の担当者など、多種多様な立場の方々が集結しました。
ペットは人間社会の一部として暮らしており、その安全を確保するためには、地域や専門領域の枠組みを超えた強固な連携が必要不可欠です。
本記事では、セミナーでの議論を通じて浮き彫りになった、これからのペット防災が進むべき道について報告します。
ワンヘルス(One Health)の理念とペット防災の関係
ワンヘルス(One Health)とは、人、動物、そしてそれらを取り巻く環境の健康は相互に深く関わっており、ひとつであるという考え方です。
この概念は、2004年に提唱された「マンハッタン原則」などを背景に、国際的な共通認識として広がりました。
災害大国である日本において、ペット防災はこの理念を具現化する具体的なフィールドとなります。
災害発生時にペットの健康や安全を守ることは、結果として飼い主の心身の安定や避難所の衛生環境の維持に繋がり、地域住民全体の健康を守ることと同義であるためです。
私たちは、人と動物の健康を切り離して考えるのではなく、包括的な地域課題として捉える必要があります。
災害時の避難や日ごろの備え ペット防災セミナー 30日、福岡市中央区で開催
専門領域と地域を超えた人的ネットワークの構築
今回のセミナー開催にあたっては、これまでの活動と同じく、多くの皆様から多大なるご支援を頂きました。
セミナー主催者様とのご縁を繋いでくださったのは、北九州市で精力的にペット防災活動を展開されているNPO法人ALLOK様です。
また、当日は北九州市獣医師会の会長先生にも終日ご同席を賜りました。
この会長を私にご紹介くださったのは、大阪で活動される獣医師の先生であり、専門家同士のネットワークが地域を越えて機能していることを象徴しています。
さらに会場には、私が監修を務めた「Fukuoka Smart city Community」の担当者であるLINE福岡(現:LINEヤフー)の担当者様も足を運んでくださいました。
こうした地域や専門領域、さらには官民の枠組みを超えた人的な繋がりこそが、ペット防災の形を作り上げる上で必要不可欠な要素となります。
▶Fukuoka Smart city Communityペット防災プロジェクト
獣医療と福祉・技術の連携がもたらす共生社会の姿
会場では、足が不自由なペットのために安価で高品質な車椅子を製作されている企業の皆様とも交流を深めました。ALLOK様を通じて知り合ったこの企業の皆様に対し、北九州市獣医師会の会長先生は、ご多忙な公務の間を縫って獣医療的な観点から積極的な相談に乗られています。
ペットの生活の質(QOL)を向上させる技術と、それを支える医学的知見、そしてそれらを繋ぐ中間支援組織。
こうした多層的な繋がりは、有事の際だけでなく平時においてもペットと飼い主を支える強固なセーフティネットとなります。
ビジネス主導の災害対策が孕む潜在的リスクへの警鐘
セミナー終了後の質疑応答において、民間のペットホテルによる預かり体制の強化が解決策になるのではないか、という問いを頂きました。
しかし、当法人はビジネス目的のみで参入する施設に対して慎重な姿勢を保つ必要があると考えています。
営利を最優先とする施設の中には、非常事態において適切な飼養管理を行わず、十分な配慮を欠いた状態で受入れを継続するケースが懸念されるためです。
金銭的利益を優先し、適正な管理を行わない施設は、結果として飼い主とペットをより困難な状況に追い込みます。
飼い主の皆様には、平時から施設の理念や管理体制を厳しく見極める眼を養っていただくことが重要です。
ペットの問題を「被災者支援問題」として再定義する
災害時におけるペット対策は、動物愛護の文脈のみで語られるべきではありません。
自治体や関係機関が、この課題を「被災者問題」であると認識することが、効果的な防災体制を構築する鍵となります。避難生活においてペットに関するトラブルが発生する背景には、動物への対応の不備があるのではなく、被災した飼い主への配慮の欠如や、周囲の避難者との調整不足があるためです。
行政、獣医師会、企業、ボランティアがそれぞれの役割を明確にし、被災者一人ひとりのニーズに対応する仕組み作りが求められます。
多様なステークホルダーが同じ場で課題を共有できたことは、実効性のある政策やサービスを生む大きな一歩となりました。










