動物愛護推進員の本当の役割とは?災害時に活きる「平時の啓発活動」の重要性

災害が起きた時、被災したペットのために活動する「動物愛護推進員」。その姿をニュースなどで目にする方も多いかもしれません。 しかし、災害時の動物救護活動は、彼らの役割のほんの一面に過ぎません。
動物愛護推進員の最も重要で根本的な役割、それは**「平時における、地道な啓発活動」**にあります。 この平時の活動こそが、いざという時にペットと飼い主の命を守る、本当の「ペット防災」に繋がるのです。
動物愛護推進員の本来の使命とは?
「動物愛護管理法」や環境省のガイドラインでは、動物愛護推進員は災害時に行政へ協力することが定められています。 しかし、制度本来の目的は、地域社会において動物愛護と適正な飼い方の知識を広めることです。
飼い主からの相談対応
飼い方に関する助言
動物愛護精神の普及
いわば、行政の手が届きにくい地域レベルでのきめ細やかな活動を担う、最も身近な相談役です。
以前、熊本市動物愛護センターの所長にお話を伺った際、「殺処分ゼロの次の課題は、地域ごとに『動物のことならあの人に』と頼られる人材を育成すること」だと仰っていました。 これこそが、まさに動物愛護推進員に求められる役割なのです。
動物愛護推進員とは?環境省資料 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/suishin-manu/honbun.pdf
現状の課題と制度への影響
しかし、一部の地域ではその役割に偏りが見られます。 例えば、保護団体の関係者が推進員の多くを占めるケースです。動物保護活動は非常に尊いものですが、それが推進員の活動の全てであるかのような誤解を生む一因にもなり得ます。
さらに憂慮すべきは、一部の推進員がSNSなどで行政施策を一方的に批判する行為です。 もちろん、行政の対応に疑問を感じることはあるでしょう。しかし、自治体から委嘱された推進員という公的な立場でそれを行うことは、行政との信頼関係を損ない、結果として動物愛護施策全体の推進を妨げることに繋がりかねません。意見はSNSではなく、正式なルートで行政に伝えるべきです。
ペット防災の本質は「平時の備え」にあり
ペット防災の本質は、災害発生後の救護活動そのものよりも、「災害時にペットと飼い主が困らない状況を、平時から作っておくこと」です。
この点を理解すれば、推進員の役割は災害時よりも平常時の方が大きいことが分かります。
推進員が平時に行うべき啓発活動の例
ペットのしつけや健康管理の重要性を伝える
避難用物資の備蓄(ローリングストック)を奨励する
地域の避難ルール(同行避難など)を周知する
一時預かり先の確保を呼びかける
これらの地道な活動の積み重ねが、災害時の混乱を最小限に抑え、多くの命を守ることに繋がるのです。
知っておくべき「災害支援」と「保護活動」の違い
ここで明確に区別すべきは、「平時の動物保護譲渡活動」と「災害時のペット支援活動」はイコールではないという点です。 災害時の支援は動物保護活動ではなく、被災者支援の一環です。動物の知識だけでなく、災害支援の基本スキルや被災者へ配慮したコミュニケーション能力が不可欠となります。
そのため、推進員が災害時に真価を発揮するには、平時の経験則だけに頼らず、専門的に学ぶ機会が必要です。自治体が開催する研修会や、私たちが実施するペット防災セミナーなどに参加し、知識と技術をアップデートし続けることが求められます。
まとめ:信頼関係と平時の啓発こそが推進員の役割
動物愛護推進員制度がその真価を発揮するためには、推進員自身がその役割を正しく理解し、自治体との信頼関係のもとで、地域に根差した適正飼養の啓発活動を粘り強く展開することが重要です。
平時における地道な活動こそが、無責任な飼育や遺棄を未然に防ぎ、結果として災害時における効果的なペット支援を実現します。 この本来の役割を一人ひとりが自覚し、行動することで、人と動物が真に共生できる、より安全・安心な社会が築かれることを期待します。