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ペット防災 在宅避難・車中泊の注意点

大地震や大規模な風水害が発生した際の対応として、小中学校や公民館といった指定緊急避難場所や避難所にペットを連れて行くことだけが避難だと思い込んでいませんか?

令和8年に改訂される環境省のガイドラインでは、避難のあり方として「分散避難」という選択肢が明確に位置づけられています。

避難とは、文字通り「難」を「避」ける行動そのものを指します。
避難所に足を運ぶことだけが正解ではなく、安全な親戚・知人宅やホテル・旅館等への退避、さらには自らの判断で自宅にとどまり安全を確保する屋内安全確保など、多様な避難行動が含まれます。

その中には、住み慣れた環境を維持できる在宅避難や、プライベートな空間を保てる車中泊も選択肢として提示されています。

他人の目を気にせず、ペットにストレスを与えにくい在宅避難や車中泊は、多くの飼い主にとって理想的な選択肢に見えるでしょう。

しかし、これらは決して「自宅や車の中に引きこもっていれば安心」という意味ではありません。
内閣府が公表しているデータに目を向けると、飼い主が受身の姿勢でいることの恐ろしさが浮き彫りになります。
避難所の外で過ごすからこそ、飼い主自身の安全確保と、主体的なペット防災の備えが強く求められるのです。

行政の支援が届きにくい現実を直視し、今私たちがどのような対応をとるべきなのか、その具体的なステップを確認していきましょう。

 在宅避難や車中泊の対策が必要な理由

環境省が分散避難を提示する背景には、近年の大規模災害における避難所の収容力不足や、アレルギーを持つ避難者への配慮といった環境的制約があります。

しかし、在宅避難や車中泊を選択する場合、行政からの支援や情報が届きにくいという致命的な構造的課題に直面します。

内閣府が全国の自治体を対象に実施したアンケート調査(回答:47都道府県、1162市区町村)の結果は、行政の認識と現場の実態にある大きな乖離を証明しています。

調査によると、市区町村の83%が在宅避難や分散避難の必要性を認識しています。

その主な理由として、「指定避難所では受け入れきれない可能性があるため」と答えたのが528市区町村、「地域の方が在宅避難を選択される場合が多いと認識しているため」が503市区町村にのぼり、行政側も分散避難の必要性は痛感していることがわかります。

ところが、実際に在宅避難者を入居後にどのように把握するかというルールや枠組みの構築については、致命的な遅れが見られます。

在宅避難者の把握方法について、約62.5%にあたる726市区町村が「決まったものはない」と回答しているのです。

さらに、状況把握を実施する際の調査票(フォーマット)が決まっていないとする自治体は、実に988市区町村にのぼり、大多数を占めています。

都道府県レベルで見ても、約半数の22団体が「決まったものはない」としているのが実態です。

実際の熊本地震の現場でも、激しい揺れによって多くの住宅が全壊・半壊する中、益城町などの避難所の駐車場に停めた車内や、敷地内のテントでペットとともに過ごす飼い主が多数存在しました。

その中には、周囲への配慮から避難所の建物に入れず、車中泊を続けざるを得ない高齢の飼い主の姿もありました。

しかし、行政やボランティアがこうした車中泊避難者や在宅避難者を個別に発見して対応し、必要な物資や支援を届けることには物理的な限界があったのです。

行政の状況把握システムが未整備である以上、受動的に支援を待っているだけでは、必要な物資や情報から完全に排除され、孤立してしまうリスクが極めて高いと言えます。
だからこそ、飼い主自身による事前の徹底したペット防災対策と、自ら状況を切り開く能動的な対応が不可欠なのです。

在宅避難・車中泊の具体的な実践手順

行政の支援枠組みが不完全であることを前提に、飼い主が自立してペットの命と健康を維持するための具体的な実践手順を解説します。

能動的な情報発信と行政支援への接続

発災直後は、行政側のリソース不足を補うためにも、飼い主自らが動いて存在を周囲に可視化させる対応が極めて重要です。

自治体の公式LINEや防災システムが稼働した際は、特定の場所でペットとともに在宅避難または車中泊している事実を、自ら登録・発信してください。

国が構築を進めている避難生活調査票を用いた個別訪問の枠組みが機能している場合は、これらを活用して能動的に行政や支援団体と繋がりを持ちにいきます。

 事前の避難行動シミュレーションと代替案の確保

在宅避難は大前提として、自宅が安全であり、居住を継続できる状態であることが条件となります。

事前にハザードマップを用いて自宅の災害リスクを正しく評価してください。
そして、もし在宅継続や車中泊の継続が不可能になった場合に備え、以下の代替案(二次避難先)を平時から複数確保しておく必要があります。

安全な地域にある親戚や知人の家

民間のペットホテルや動物病院での預かり枠

ペットの受け入れが可能な遠方の自治体の施設

排泄・衛生マネジメントの空間・運用計画

長期間の避難生活では、物資の有無だけでなく、限られた空間を衛生的に維持するための運用ルールが成否を分けます。

在宅避難の場合は、人間の生活スペースとペットの排泄エリアを物理的に完全に分離するゾーニングを行ってください。

換気効率の悪い部屋での排泄は、悪臭だけでなく感染症のリスクを高めます。

車中泊の場合は、車内の限られたスペースを汚さないよう、排泄のタイミングを完全にコントロールするか、車外に一時的な排泄スペースを設けるルールを決めておきます。

また、回収された排泄物のゴミをどこに一時保管するかも重要です。 車内や室内に放置せず、直射日光の当たらないベランダや車外のルーフキャリアなど、居住空間の外に衛生的に隔離する動線を事前に確保しておいてください。

 猫・犬の習性に応じたポイント

長期間にわたる在宅避難や車中泊を乗り切るためには、犬や猫の習性を踏まえた環境作りとしつけが鍵を握ります。

犬の場合は、室内や車内での二次的な怪我やパニックによる脱走を防ぐため、クレートを安全なシェルターとして認識させることが必須です。 普段からクレートの中で安心して過ごせるようにするクレートトレーニングを行ってください。

また、災害時は外での自由な散歩や排泄が難しくなるため、室内や車内の特定のシーツの上で、飼い主の音声コマンドに従って排泄ができる習慣をつけておくことが、長期間の避難生活を衛生的に維持するためのポイントとなります。

猫の場合は、環境の変化に極めて敏感で、見慣れない環境やストレスによって排泄を我慢してしまい、泌尿器系の病気を引き起こしやすい習性があります。

災害によっていつも使っている猫砂が手に入らなくなるリスクに備え、普段から紙、木、おから、鉱物など、複数の材質の猫砂や、細かく切った新聞紙などでも排泄ができるように慣れさせておくことが重要です。

また、犬と猫に共通して、不妊去勢手術を事前に済ませておくことは、災害時の多大なストレスによる発情や、それに伴う特有の問題行動、突然の脱走を防ぐ上で極めて有効な対策となります。

在宅避難と車中泊におけるNG行動

在宅避難や車中泊を選ぶ飼い主が最も陥りやすい失敗は、受動的な姿勢のまま「物資支援」や「情報支援」の枠組みから完全に孤立してしまうことです。

行政の把握体制が整っていない以上、自宅や車の中に留まったまま外部との接触を断ってしまうと、国や自治体が用意した支援の視界から完全に外れてしまいます。

その結果、本来受け取れるはずの配給物資や、生活再建に不可欠な災害情報が一切届かないという、深刻な物資支援・情報支援からの孤立を自ら招く原因になります。

避難所の外で過ごすからこそ、自ら定期的に近隣の指定避難所へ足を運び、掲示板の情報を自らの目で確認したり、物資の配給を受けたりするための能動的な動線と準備が絶対に必要です。

また、換気や乗り降りの一瞬の隙を突いたペットの脱走は、命に関わる最悪のNG行動です。

災害時は普段おとなしいペットであっても、大きな余震や見知らぬ物音にパニックを起こし、外へ飛び出そうとします。

車中泊において、換気のために窓を開ける際は、ペットの頭が絶対に出ない幅にとどめるか、物理的に固定できるペット用メッシュシェードや脱走防止ネットを窓枠に必ず装着する対応をとってください。

さらに、車のドアを開閉する際は、必ずペットのリードを車内のシートベルトバックルやアシストグリップなどの固定金具に繋ぎ、物理的に飛び出せない状態を作ってからドアを開けることを徹底してください。

在宅避難の場合も同様です。 換気で窓や玄関を開ける際は、必ずペットを別の部屋に隔離するか、頑丈なクレートに収容した状態で行う必要があります。

網戸を突き破って外へ飛び出すケースが多発しているため、「網戸を閉めているから大丈夫」という思い込みは今すぐ捨ててください。

熊本地震などの被災地支援で培った経験と、環境省との協働プロジェクトの実績をもとに、実践的な講演を行っています。【ペット防災セミナーの詳細】はこちらをご覧ください。

安全な分散避難のためのアクション

令和8年に改訂される環境省のガイドラインにより、在宅避難や車中泊を含む分散避難は、指定避難所への避難と並ぶ重要な選択肢として位置づけられました。

これに伴い、ペットと暮らしている人の中には、災害時の対応として「うちはペットがいるから家にいる」「非常時は車中泊をする」と最初から決めている人が多くいらっしゃいます。

周囲への気兼ねをなくし、愛するペットを落ち着いた環境にいさせてあげたいという気持ちは、飼い主として当然の心理かもしれません。

しかしその一方で、具体的な備えやシミュレーションを一切せずに、ただ漠然と「そうするつもりだ」と言っているだけで、いざという時の対応策が抜け落ちている飼い主さんが多いのも現実です。

これからの分散避難は、単に自宅や車に引きこもる行為では決してありません。
内閣府の調査データが証明している通り、行政側が避難所の外にいる被災者の状況やニーズを把握し、的確な対応をとるための枠組みは未だ発展途上です。

外部との連絡を絶ってしまえば、物資支援や情報支援から完全に孤立し、重大な危機に陥ることは火を見るより明らかです。
在宅避難や車中泊を成立させるためには、集めた物資を活かすための「空間のゾーニング」や、一瞬の油断も許されない「物理的な脱走防止策」に加え、行政の未整備な枠組みに埋もれて孤立しないための「能動的な情報発信と収集の仕組み作り」など、有事における飼い主自身の能動的な対応力と多様な備えが不可欠となります。

災害時のペット同行避難は基本ですが、それをどの場所で展開するにしても、飼い主の事前の備えが状況を左右します。

今日すぐ実行できる最初の一歩として、まずはご自宅の災害リスクをハザードマップで確認し、在宅避難が本当に安全に継続できる環境かどうかを客観的に評価してください。

在宅避難が可能と判断できたら、次に車中泊や室内での脱走防止策を具体化させましょう。

車に装着できるメッシュシェードのサイズを確認したり、室内の窓や玄関に設置できるパーテーションや頑丈なクレートの配置を決めたりして、一瞬の隙も作らない物理的な環境作りに着手してください。

また、スマートフォンの充電環境の確保や自治体の防災アプリの事前登録など、情報を能動的に取得・発信するためのデジタルな備えも今すぐ進めるべきです。

日頃から近隣住民にペットの存在を知ってもらい、笑顔で挨拶を交わすような共助のネットワークを作っておくことも、非常時に物資支援や情報支援から孤立せず、地域から必要な情報を得るための強力な武器となります。

災害はいつどこで起きるかわかりません。今日からできる最初のアクションを一緒に起こしていきましょう。

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