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早めの避難

ペット防災「まだ大丈夫」が命取り。とにかく早く逃げて

はじめに:その油断が命取りに。「まだ大丈夫」という危険な思い込み

「今までこの地域で大きな被害はなかったし、今回も大したことないだろう」 「避難警報が出ているけど、まだ家の周りは静かだ」

災害が迫る中で、私たちの頭をよぎるこうした根拠のない自信や思い込み。これは「正常性バイアス」と呼ばれる心理的な働きで、「自分だけは大丈夫」と危険を過小評価してしまう心のメカニズムです。これこそが、あなたと愛するペットの命を脅かす、最も恐ろしい落とし穴なのです。

近年の日本では、これまでの経験則が全く通用しない「想定外」の災害が毎年のように発生しています。「数十年に一度」と言われるような豪雨が頻発し、これまで安全とされてきた地域が甚大な被害に見舞われるケースも少なくありません。

あらゆる災害から、かけがえのない家族であるペットの命を守るための最大の鍵は、「正確な情報をもとに」「ためらわず早く避難すること」。このペット防災における絶対的な鉄則を、今一度、深く胸に刻む必要があります。

なぜペット連れの避難は「もっと早く」なければならないのか?

特に豪雨や台風など、ある程度進行が予測できる災害において、早めの判断と行動が生死を分けます。状況が悪化し、道路が冠水したり、土砂崩れで寸断されたりする前に安全な場所へ移動を完了させることが、何よりも重要です。

そして、私たちペットの飼い主が絶対に忘れてはならないのが、ペットを連れての避難は、私たちが想像する以上に時間と手間がかかるという厳然たる事実です。

人間だけであれば身一つで飛び出せるかもしれませんが、ペットと一緒の場合はそうはいきません。

ペットの確保に時間がかかる:異変を察知した犬や猫が、恐怖からソファの下や家具の裏に隠れてしまい、出てこなくなることがあります。パニック状態のペットを落ち着かせ、キャリーケースやケージにスムーズに入れるのは、平時でさえ難しいことがあります。

備蓄品の準備に時間がかかる:フードや水、トイレ用品、常備薬など、ペット専用の避難グッズをリュックに詰めるのにも時間がかかります。「あれはどこだっけ?」と探しているうちに、あっという間に貴重な時間が過ぎていきます。
移動そのものに時間がかかる:ペットを抱えたり、複数のケージを運んだりしながらの移動は、大人が一人で歩くよりも格段にスピードが落ちます。道が混雑していたり、足元が悪かったりすれば、その時間はさらに長くなります。
このように、ペットとの同行避難には多くの「時間的障壁」が存在します。「まだ大丈夫」ではなく、「もう危ないかもしれない」という危機意識を持ち、気象情報や自治体から発表される避難情報に最大限の注意を払い、ためらうことなく避難を開始する決断力が求められるのです。

「避難したけど何もなかった」は、最高の防災訓練である

「結局、何も起こらなかった。避難して無駄足だったかな?」

警戒レベルが下がり、自宅に戻ったときに、そう感じることがあるかもしれません。しかし、それは決して無駄足ではありません。むしろ、「何もなくて本当に良かった」という最良の結果であり、これ以上ない最高の防災訓練なのです。

「空振り」を恐れて避難をためらい、万が一の事態に巻き込まれてしまうことこそ、絶対に避けなければならない最悪のシナリオです。

実際にペットを連れて避難を経験することには、計り知れない価値があります。

避難経路の課題発見:「この道は街灯が少なくて夜は危ないな」「側溝の蓋が開いていて、小型犬には危険だ」など、ハザードマップだけではわからないリアルな危険箇所を発見できます。
持ち出し品の過不足の確認:「フードは足りたけど、ウェットティッシュが思ったより必要だった」「おもちゃを入れてあげればよかった」など、本当に必要なものが具体的にわかります。
ペットの反応の確認:「うちの子はキャリーバッグの中で意外と落ち着いていた」「車の移動が思ったよりストレスだったようだ」など、愛犬・愛猫の災害時における本当の姿を知ることができます。
こうした机上では決してわからないリアルな課題や発見こそが、次の災害への備えをより確実なものにしてくれるのです。「空振りだった避難」は、あなたとペットの防災スキルを格段にレベルアップさせる、貴重な実践経験となります。

命を守る判断のために。平時から準備すべき情報収集

的確な避難判断は、信頼できる情報があって初めて可能になります。テレビやラジオの速報に頼るだけでなく、平時から複数の情報源を確保し、自宅周辺のリスクを具体的に把握しておくことが重要です。

ハザードマップの確認: まずは、お住まいの自治体が発行しているハザードマップを確認しましょう。自宅が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に含まれていないか、含まれている場合はどの程度の危険度なのかを事前に知っておくことが、避難の判断基準になります。
避難所の確認: 「ペットと一緒に避難できる場所はどこか?」「受け入れのルールはどうなっているか?」を、必ず平時のうちに自治体の防災担当課やウェブサイトで確認しておきましょう。いざという時に慌てて探すのでは手遅れです。
公的情報を優先する習慣: 災害時には、善意からくるものも含め、多くのデマがSNSなどで拡散されます。「〇〇地区はもうダメらしい」といった不確かな情報に惑わされず、気象庁や自治体、信頼できる報道機関など、公的機関からの情報を最優先し、冷静に判断する癖をつけましょう。 

まとめ:「じぶんごと」として捉え、ためらわず行動する勇気を

災害を「じぶんごと」として真摯に受け止め、常に最悪の事態を想定する。そして、その最悪を避けるために、勇気をもって「早めの避難」を徹底する。

それが、あなた自身と、かけがえのないペットの命を守る、最も確実な方法なのです。

避難をためらう一瞬の油断が、一生の後悔につながる可能性があります。「空振りを恐れず、ためらわず避難する」ことこそが、愛するペットに向けた最大の愛情表現であることを、どうか忘れないでください。

避難の為の「備蓄」のポイントはこちら https://petbousai.jp/guide_category/just-in-case-preparation