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ペット防災「吠える犬」と避難所へ。災害対策は日常の信頼関係から

【犬の災害対策】吠えるから避難をためらう飼い主さんへ

日常からできる安心の育み方 飼い主さんにとって、愛犬に関する困りごとでよくあげられるのが「吠える」行動です。特に、愛犬がよく吠えると感じている飼い主さんにとって、その悩みは「災害時の同行避難」をためらう大きな理由につながっているのではないでしょうか。

避難所や車中泊など、日常とは違う環境では、多くの人や他の動物と狭い空間で過ごすことになります。そんな時、「うちの子が吠えて迷惑をかけてしまうのでは…」と不安に思うのは当然のことです。 しかし、その不安を理由に同行避難を諦めることは、愛犬とご自身の命を危険にさらすことになりかねません。

ここでは、犬の災害対策として、「犬が吠える行動」について「ふだんから」考えていきましょう。

犬にとって「無駄吠え」はありません

私たちはつい「無駄吠え」という言葉を使いがちです。しかし、犬にとって無駄な吠えというものはありません。 では、吠える=悪いことなのでしょうか? 犬が吠えるのには、必ず理由があります。犬は言葉を話せない代わりに、「吠える」という行動で自分の気持ちや要求を私たちに伝えているのです。 吠えるのは「気持ち」を伝えるサイン 愛犬が何と言っているのか、耳を傾けてみましょう。

「怖いよ!」(不安・恐怖) 「遊ぼうよ!」(要求・興奮) 「誰か来たよ!」(伝達)

「あっち行って!」(威嚇) 「嬉しい!」「楽しい!」(興奮・喜び)

このように、犬は吠えることで自分の気持ちを表現しています。 人間の子供に置き換えてみると… 例えば、人間の子供に置き換えて考えてみましょう。

「怖いよ」と泣いている子供に向かって、「うるさい!泣くんじゃない!」と頭ごなしに叱るでしょうか。 多くの場合、「怖くないから大丈夫よ。ママ(パパ)がいるからね」と優しく声をかけ、抱きしめて安心させてあげるのではないでしょうか。

犬も同じです。なぜ吠えているのか、その理由に寄り添うことが第一歩です。

「吠え」が災害対策において重要な理由

「ふだんから」吠えの理由を理解しておくことは、平時はもちろん、災害対策において非常に重要です。 避難所生活での大きなストレス源 災害時は、犬にとっても極度のストレス環境です。

いつもと違う場所、知らない人々の気配、他の動物の存在、そして何より飼い主さんの不安や緊張。これらは全て、犬の不安を増大させます。 普段は吠えない犬でも、強いストレス下では警戒心から吠え続けてしまうことがあります。

だからこそ、日常から「何があっても飼い主さんが守ってくれる」という絶対的な安心感を育てておく必要があるのです。

誤った対処法が招くリスク

「吠える」理由を考えずに、吠えた瞬間に「叱る」「大きな音で脅かす(天罰方式)」といった方法を試したことはないでしょうか。 これらの方法は、一時的に吠えをやめさせたように見えても、犬の「不安」や「恐怖」という根本的な感情をさらに強めてしまう可能性があります。

特に災害時という極限状態では、恐怖心が増幅され、パニック行動につながる危険すらあります。 愛犬の「吠え」と向き合う、

ふだんからの備え

「吠える」を一括りにして「こうしたら吠えなくなる」という魔法のような手法は、残念ながらありません。大切なのは、日々の観察と関係づくりです。 まずは「なぜ?」を観察することから まずは「なぜ今、愛犬が吠えているのか?」をよく観察することから始まります。

どんな時に吠えるのか?(例:チャイムが鳴った時、他の犬とすれ違う時) いつから吠えるようになったのか?

吠えるきっかけがあったのか? 特定の犬や人にだけ吠えるのか? 吠え方に違いはあるのか?(例:甲高い声、低い声)

逆に、吠えないときはどんな時か? 理由がわかれば、対処法も見えてきます。

例えば、すれ違う犬に吠えるなら、吠えそうになる前にオスワリさせるなどして愛犬を落ち着かせ、「通り過ぎるまで待ってようね」などと優しく声をかけたりして、吠えなくて済む状況を作り、吠えずにいられたら褒めます。

飼い主さんが「安心基地」になる

このとき、飼い主さんが「また吠えるかも…」とドキドキしていると、その緊張はリードや空気を通じて敏感な愛犬に伝わり、余計に吠えさせてしまうことがあります。 大切なのは、飼い主さんがどっしりと構えて「大丈夫、私がいるから」という態度で冷静に対処することです。そして、吠えずにいられた瞬間、吠えるのをやめた瞬間を逃さず、必ず褒めてあげてください。

これを繰り返すことで、愛犬は「この人がいれば、自分が頑張って吠えなくても大丈夫だ」「吠える必要がない」ということを学び、飼い主さんを信頼するようになります。

まとめ:飼い主さんの落ち着きが愛犬の最大の「災害対策」

災害という非日常において、愛犬がパニックにならずに落ち着いていられるかは、飼い主さんとの「ふだんから」の信頼関係にかかっています。 飼い主さんが日頃から愛犬をよく観察し、どんな時も愛犬を守るという強い気持ちでいること、そして「安心できる場所(クレートなど)」を用意してあげること。それこそが愛犬の安心感につながり、いざという時の吠えを減らす最も有効な犬の災害対策となるのです。

ドッグライフカウンセラー 小川京子