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ペット防災の基本は「命綱」。あなたのリードと首輪、災害時に本当に役立ちますか?

はじめに:そのリードは、愛犬の「命綱」ですか?

突然のサイレン、地面の揺れ、周囲の喧騒――。災害時の混乱した状況で、パニックになった愛犬とあなたをつなぐものは何でしょうか。それは、普段何気なく使っている一本のリードです。

犬にとってリードは、ただのお散歩道具ではありません。特に災害時においては、飼い主さんと犬をつなぎ、命を守るための最重要備蓄品、まさに「命綱」なのです。

この記事では、災害時の「安全な移動」を確保するという観点から、なぜリードや首輪が重要なのか、そしてどのようなものを「備蓄品」として準備すべきなのかを詳しく解説します。

なぜリードは「命綱」なのか?災害時に潜む具体的な危険

「うちの子は普段おとなしいから大丈夫」と思っていても、災害時の極限状況では普段と全く違う行動をとることがあります。大きな音や揺れ、周囲の人々の混乱した様子に驚き、パニックに陥ってしまうのです。

そんな時、もしリードが手から離れたり、首輪が抜けたりしたらどうなるでしょうか。

車道への飛び出し:信号が機能していない道路、緊急車両が行き交う中へ飛び出す危険があります。
人や自転車への衝突:避難する人々で混雑する中、他の人に怪我をさせてしまう可能性があります。
他の動物とのトラブル:同じく興奮状態にある他の犬と、喧嘩になってしまうかもしれません。
がれきや危険物への接近:割れたガラスや崩れたブロック塀など、危険な場所に近づき大怪我をする恐れがあります。
こうした命に関わる事態を防ぎ、愛犬を確実に制御できる唯一の物理的な手段が、あなたの手にあるリードなのです。だからこそ、その選び方、使い方、そして日々の管理が、ペット防災の根幹をなす重要な要素となります。

あなたの備えは万全?「命綱」となる道具の正しい選び方

避難持ち出し袋に予備のリードや首輪を入れている方は多いでしょう。しかし、その道具は本当に「命綱」として機能するものでしょうか。価格やデザインだけで選んでいては、いざという時に後悔することになりかねません。

リードの選び方:3つのチェックポイント
 

安全な避難を実現するため、備蓄品として準備するリードは以下の3つのポイントを確認してください。

長さ:1.5m前後の「伸縮しない」タイプが基本 常に犬を自分のコントロール下に置けるよう、伸縮しない通常のリードを選びましょう。長すぎると障害物に絡まったり、咄嗟に引き寄せたりすることが難しくなります。
素材と強度:愛犬の力に耐えられるものを 愛犬の体格や引っ張る力に合った、十分な太さと強度のある素材を選びましょう。ナイロン製、革製などがありますが、雨天時の避難も想定し、濡れても強度が落ちにくいものが望ましいです。縫製がしっかりしているかも必ず確認してください。
金具(ナスカン):意外と見落としがちな重要パーツ リードの故障で最も多いのが、首輪や胴輪につなぐ金具(ナスカン)の破損です。たとえリード本体が丈夫でも、ナスカンが愛犬の力に耐えられなければ意味がありません。小型犬に重すぎるナスカンは負担になりますし、逆に大型犬に華奢なナスカンは危険です。愛犬に合ったサイズと強度かしっかり確認しましょう。また、近年は手作りのリードも見られますが、命を預ける道具として、「耐荷重試験」をクリアしているかどうかも重要な選択基準です。

首輪と胴輪の選び方:「抜けない」ことが最優先

首輪や胴輪も命綱の重要な一部です。ファッション性を重視するあまり、災害時には不向きなものを選んでいないでしょうか。

ビーズなどの装飾が多いものや、洋服と一体型になっているタイプは、デザインの構造上、体との間に隙間ができやすく、犬がパニックで後ずさりした際にすっぽ抜けてしまう危険性が非常に高いです。備蓄品としては、シンプルで体にしっかりフィットさせられる作りのものを選びましょう。

命を守る日常習慣:正しい使い方とメンテナンス

適切な道具を備えることと同時に、それを正しく使いこなし、常に最良の状態を保っておくことが「安全な移動」に繋がります。

正しい持ち方と危険な持ち方
散歩中のリードの持ち方は、そのまま避難時の持ち方になります。 推奨されるのは、まず持ち手を「手首」に通し、その上でリードをさらに「手のひらに一巻き」して握り込む方法です。こうすることで、万が一手が開いてしまっても、手首に引っかかり、愛犬が離れてしまうのを防ぐ最後の砦となります。 逆に、腰に巻いたり、たすき掛けにしたりする方法は、犬に強く引っ張られた際に飼い主自身がバランスを崩して転倒しやすく、非常に危険です。

フィット感の確認は「散歩のたび」に
実は9割の犬は適正に首輪や胴輪がついていません。一番の原因は緩すぎることです。 「きつくて可哀そう」という思い込みから緩く着けがちですが、実は緩い方が犬にとって危険で苦しいのです。引っ張った際に点で体に食い込んでしまったり、何より、ふとした瞬間に頭が抜けてしまいます。 フィット感の目安は、首輪(胴輪)と体の間に、大人の指が第一関節まで2本、ぎりぎり入るくらいです。 災害時のストレスによる体重の増減、換毛期やトリミング後の毛量の変化でもフィット感は変わります。散歩のたびに確認するくらいの意識が大切です。

道具は消耗品と心得る

リードや首輪は、毎日使うことで少しずつ傷んでいく消耗品です。雨に濡れたり、汚れて洗ったりすることで素材は劣化し、突然ちぎれることもあります。子犬がじゃれて噛むことで、内部にダメージが蓄積しているかもしれません。 毎日の散歩前に、金具は正常に動くか、布や革に傷みがないかをチェックする習慣をつけましょう。

【最重要】災害時に伸縮リードが「凶器」に変わる理由

自由に動けるため犬に優しいと勘違いされがちなフレキシブル(伸縮)リードですが、災害時の安全な移動という観点では、時に「凶器」にもなり得る非常に危険な道具です。

制御不能になる危険: 犬が先に走ればどこまでも伸びるため、危険な場所への侵入や飛び出しを瞬時に防げません。
重大事故の危険: とっさにリードを手で掴むことによる火傷、急なロックによる犬の首への衝撃といった事故が多発しています。伸びた細い紐が人の目に入り失明した事例や、木に巻き付いて犬が骨折した事例も報告されています。
第三者を巻き込む危険: 伸びたリードは非常に見えにくく、避難で混雑する中、他の歩行者、自転車、ベビーカーなどを引っかけて転倒させてしまう大事故につながりかねません。
災害時の避難経路はがれきや水たまりで狭く、避難所では犬の苦手な方や高齢者もすぐそばにいます。リードを短く持って犬を常に体の側におくことが絶対的なルールです。普段から伸縮しないリードで安全に歩く練習をしておくことが、そのまま災害時の安全な移動につながります。

まとめ:最高の備蓄品は、日頃から使い慣れた安全な道具

災害から愛犬と自分の命を守るための「安全な移動」は、特別な準備から始まるわけではありません。 日頃からリードを「命綱」として認識し、安全な道具を選び、正しく使う習慣を身につけること。これこそが、いざという時に最も役立つ、最高の「備え」であり「備蓄」なのです。

避難持ち出し袋に入れる予備のリードや首輪も、しまいっぱなしの新品ではなく、普段から交互に使うなどして犬も飼い主も使い慣れたものを準備しておくと、より安心して避難することができます。

ドッグライフカウンセラー 浅沼 瑠実

備蓄品リスト完全ガイドはこちら https://petbousai.jp/guide_category/emargency-supplies-list